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【ルックバック】思わず涙した傑作読切マンガ【ネタバレ考察レビュー】

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少年ジャンプ+で公開されるやいなや、瞬く間に話題を掻っ攫っていった『ルックバック』

皆さんはご覧になられたでしょうか?

作者は『ファイアパンチ』や『チェンソーマン』で有名な藤本タツキ先生です。

 

全143ページの長編読み切り。胸が打たれる場面もあり、読後は思わず涙しました。

何回も読み返すほど好きな作品になったので、先日書店で単行本も購入しました!

今回の記事では『ルックバック』の作品紹介、実際に筆者が読んで感じたこと、考察をまとめています。

この本はこんな人におすすめ!
  • 心打たれる体験をしたい人
  • サクッと読める漫画を探している人
  • 読後、考察をして楽しみたい人
  • サメという言葉に敏感な人

 

 

『ルックバック』作品情報

▼少年ジャンプ+では現在、1話のみ公開されています。ぜひ試し読みを!

『ルックバック』あらすじ

Story
田舎町に住む少女・藤野は、学内で発行される学年新聞に自作の4コマ漫画を載せていた。クラスメイトからの評判も良く、藤野は自分の才能に自信を持っていた。

ある日担任に呼ばれた藤野は、4コマ漫画の枠をひとつだけ、隣のクラスの生徒に譲ってあげてほしいとお願いをされる。その生徒は、不登校の京本。学校にも来れない軟弱者に漫画は描けないと思っていた藤野だったが、次号で掲載された京本の絵、その圧倒的な画力に驚きを隠せなかった。

4年生で私より絵ウマい奴がいるなんてっ 絶っっ対に許せない!

出典:『ルックバック』10P

悔しい思いをバネにして、藤野は本格的に絵の勉強を始める。その間も、学年新聞への4コマ投稿は決して欠かさなかった。

月日は流れ、卒業式。京本に卒業証書を届けてやってほしいと担任に言われ、嫌々ながらも藤野は教えてもらった京本の家へ向かう。

初めて顔を合わせた二人。そこで藤野が彼女に言われた言葉とは・・・。

 

『ルックバック』登場人物

  • 藤野:漫画を描くのが得意な少女。自分の才能に絶対的な自信を持っていたが、京本の存在を目にして悔しい思いを味わい、生まれて初めて真剣に絵の練習に取り組む。活動的な性格で、京本を引っ張っていく。
  • 京本:引きこもりの少女。背景画を描くのが得意。学校には通っていないが、藤野と同じく学年新聞に4コマ漫画を投稿していた。大人しく内向的だが芯は強く、自分の意見をしっかりと藤野に伝える。

 

『ルックバック』感想  ※ネタバレ

以下、ネタバレ感想を含みます。

 

 

 

初めて挫折を味わった藤野

『京本の絵と並ぶと、藤野の絵ってフツーだなぁ!』

出典:『ルックバック』9P

それまでクラスメイトや先生に絵を褒められていた藤野。突然、京本という存在が現れたことによって、周囲の評価は変わります。

運動神経もよく、漫画も描ける藤野は周りからも"出来る人"だと思われていて、藤野自身も満更ではありませんでした。(自信たっぷりな小学生藤野はとても可愛いです)作者の藤本先生はこの青臭い小学生らしさを描くのが上手だなあと、感心しました。

しかしそれは狭いコミュニティの世界の話で、井の中の蛙だった藤野。絵(背景画)が抜群に上手い京本に対して嫉妬し、絶対に彼女より上手くなってやろうと心に決めたのです。

学校の授業中に休み時間、家でも絵ばかり描き続けた藤野は、友達付き合いも少なくなり、成績も下がってしまいました。クラスメイトや姉からは心配され、中学でも絵を描くの?と投げかけられます。

放っておいてくれと思う藤野でしたが、ある日の学年新聞を見てから、自分の画力にふっと嫌気が差したのか、絵を描くのをやめてしまいます

自分の絵の横に載せられている、京本の絵。その画力の高さに、2年間必死に絵の勉強をした藤野は追いつけませんでした。

少し絵の練習をしたくらいでは急激に画力が上がらない、という描写もリアルです。

・・・実際のところ、藤野の4コマは動きがあってオチもしっかりしているギャグマンガ。京本の絵は、4コマ形式ではありますが、描かれているのは繊細な背景画です。それぞれジャンルが全く違いました

この二人がこれから実際に顔を合わせ、物語は動き出します。

ちなみに、藤野の4コマは普通に面白いです!
(これを考えている藤本先生が一番凄い)

 

 

藤野と京本の出会い

私っ!! 藤野先生のファンです!!  サインください!!

出典:『ルックバック』37P

京本の家に着いた藤野でしたが、呼びかけても京本は出てきませんでした。

そこで家の中に入ってみると、廊下には大量に積み上げられたスケッチブックが。4コマの原稿用紙を見つけた藤野は、部屋から出てこない京本を揶揄する、即席の4コマ漫画を描きあげます。

幸か不幸か、その紙はするりと藤野の手を離れ、京本がいるであろう部屋のドアの下をくぐり抜けてしまいました。

ここで京本は、藤野が描いた4コマだと気づいて部屋から飛び出して来るのですが、藤野は自分の名前などは書いていません。
京本は筆致だけで、藤野の描いた漫画だと分かったのでしょう。

藤野は一方的に京本をライバル視していましたが、京本の藤野に対する思いは違いました。

実は京本は藤野の大ファンで、学年新聞の4コマを毎週楽しみにしていました。人が怖くなって学校に行けなくなってしまった京本は、吃りながらも言葉を絞り出して、藤野の作品が好きなのだと必死に伝えます。

私はここで既に目頭が熱くなってしまいました。それまで京本に良い感情を抱いていなかった藤野。画力が上がらない自分への不甲斐なさ、素晴らしい筆力を持つ彼女のことが羨ましくて仕方なかったのだと思います。

その当人からラブコールを受けて、どうして漫画を描くのを途中でやめてしまったのかと藤野は問われます。

ていうかまあ・・・あの ていうか今漫画の賞に出す話考えてて ステップアップする為にやめたって感じだけど?

出典:『ルックバック』40P

・・・本当か!? と、読みながらちょっと笑ってしまいました。京本の前で、思わずカッコつけてしまう藤野が可愛いです。

それを聞いた京本は大はしゃぎで、絶対に見たい!と藤野に熱量を込めて伝えます。

話ができたら見せてもいいよ、と約束し、彼女に卒業証書を届けた藤野はやがて帰路に着きます。

この後、雨に打たれながら踊る藤野が、私がこの漫画で一番好きなシーンです。

京本に自分の漫画を褒められた藤野の、隠しきれない喜びが伝わってきます。

 

そして家に帰るとすぐに机に向かって漫画のネームを描き始める藤野。服が濡れているのにも関わらず、一心不乱です。

きっと早く描き上げて京本に見せたかったのだと思います。頭の中に構想がないと、すぐに筆は動きません。藤野の漫画に対する情熱は決して失われていなかったのだと、察することができます。

 

タッグを組んだ二人

中学にあがった藤野と京本は、一緒に漫画を描き始めます。

それぞれの得意分野が既にあった二人。藤野はキャラクター(人物)、京本は背景担当です。

藤野が学校から帰ると家には京本がいて、背景の書き込みをしています。ハイペースで描いているのにも関わらず完成への道のりは長く、月日は経過します。

やがて作品を完成させた二人。それぞれの名前を合わせて、"藤野キョウ"というペンネームで集英社に持ち込みをします。

結果は準入選。

漫画の中には描かれていませんが、おそらくこの結果を見てお互いの家族もとても喜んだと思います。(特に、藤野の両親は部屋に籠って漫画ばかり描いている娘を密かに心配していました)

町に繰り出す藤野と京本

準入選を果たした藤野と京本は、入賞金もゲットします。(かなりの大金です!)

藤野は、親と一緒に作った通帳から10万円を下ろしてきて、これから町へ出かけようと京本を誘います。

貯金しなくて大丈夫なの? と心配そうな京本ですが、藤野はこう答えます。

これからもじゃんじゃん漫画描いて稼ぐし!この金で経済ぐるぐる回していこうぜ!

出典:『ルックバック』58P

な、なんてかっこいい台詞・・・!

この時点で二人はまだ13歳です。当たり前のようにこれからも漫画を描くという未来を見ていることが、凄い。

町に繰り出した藤野と京本は、クレープ屋や映画館、喫茶店や本屋で楽しい時間を過ごします。それまでひたすら絵ばかり描いていた二人の、学生らしい側面を見ることができます。

帰りの電車の中で、京本は藤野に告げます。

本当は今日、外に出るのが怖かったと。

京本は人が怖くなってしまったせいで、学校へも行けなくなってしまいました。

藤野ちゃん 部屋から出してくれてありがとう

出典:『ルックバック』63P

作中には直接描かれていませんが、京本にとって辛いことが学校生活の中であったのでしょう。引きこもりだった自分を外の世界に連れ出してくれた藤野に、京本は感謝していました。

それから藤野キョウとして、二人は多くの作品を生み出します。

 

それぞれの道を歩み始める二人

高校を卒業したら、連載をさせてもらえることになった藤野と京本。

17歳の時点で、既に読み切り7本を載せていました。順風満帆の漫画家生活です。

しかし、ここで京本は自分の思いを藤野に打ち明けます。

美大に行きたい。

藤野の力に頼らずに、一人で生きれるようになりたい。

これを聞いた藤野は、不器用ながらも京本に行ってほしくない思いをぶつけます。

アンタが一人で学生生活できるわけがない、私に着いてくれば全部上手くいくんだ・・・

藤野は焦っていたと思います。口では、京本が描いている背景は別のアシスタントに任せればいいと言っていますが、自分にとっての相方は京本しかいないと、藤野は分かっていました。だからこそ、彼女を手放したく無かったのでしょう。

京本も、藤野に頼りっぱなしの自分が情けないと思っていました。同時に、背景美術の世界という本に魅了された彼女は、もっと絵が上手くなりたい、理想の絵が描きたいと強く願います。

泣きながら静かに自分の思いを伝える京本に、藤野は折れるしかありませんでした。

 

 

漫画家"藤野キョウ"

藤野と京本は道を違えても、絵を描くことへの情熱は変わりませんでした。

藤野は連載作家、京本は美大生となります。

椅子(バランスボール)に座り、机に向かって作業中の藤野。

藤野の連載作品は、その名も『シャークキック
(個人的にめちゃくちゃ読んでみたいです・・・)

藤野は、"藤野キョウ"というペンネームを使い続けます。きっと、彼女がいつでも戻って来られるように。

単行本も順調に巻数を重ね、シャークキックはアニメ化が決定しました。

そんな中でした。

全く予期しない、事件が起こってしまいます。

突然訪れた別れ

京本の通う美大に、刃物を持った男が侵入したとニュースが流れます。

藤野は作業中の手を止め、すぐに京本に電話をかけます。しかし彼女は出ず、今度は実の母に電話をかけました。

いつか連載作品を持てたら、超作画でやりたいよね!

雪の降る中でのいつかの京本との会話、走馬灯が頭をよぎります。

現実は非情でした。母との会話で、決定的なことを聞いてしまったのでしょう。藤野は携帯を床に落とし、その場に立ち尽くします。

その後藤野は『シャークキック』を休載。

卒業証書を届けに行ったあの日、自分が4コマなんて描かなければ・・・京本が部屋から出てくることはなかったのに。

京本が死んだのは私のせいだ。

藤野は自分を責めて、涙をこぼします。

 

もうひとつの未来

ここからが、この漫画の凄いところでした。

タイトルの『ルックバック』の意味に込められているであろう、過去の回想が始まります。

京本の部屋の前で、自分がかつて描いた4コマ漫画の紙を破いてしまう藤野。

"出てこないで"と描かれた1コマ目のみが、京本の部屋のドアの下を潜ります。

部屋から出てこなければ、京本が亡くなることはなかった。藤野の悲痛な思いが、小学生の頃の京本へ届きます。

当然、小学生の京本は自分の未来を知る由はありません。

彼女は謎のメッセージに言われた通りにすぐに部屋から出ず、藤野と顔を合わせることはありませんでした。

二人がタッグを組んで漫画を描くことはなく、月日は流れます。やがて京本が背景美術に魅了され、美大を受験する未来へと行き着きます。

 

美大生となった京本は、学内のソファで休憩をしていました。

そこで、侵入してきた犯人に襲われてしまいます。

しかし、それを助けたのは藤野でした。

絵を描くことへの情熱

もうひとつの未来の京本は、藤野に命を救われました。

藤野は隣町の道場で昔から空手を続けており、"シャークキック"ならぬ、"カラテキック"を犯人にお見舞いしました。

命の恩人である彼女ーーー藤野という名前に聞き覚えがあった京本は、小学生の頃に4コマ漫画を描いていた藤野先生ですか、と彼女に尋ねます。

それを聞いた藤野も、なんだか凄い偶然だね、と嬉しそうです。

 

実は藤野は、絵を描くことへの情熱を忘れておらず、最近また漫画を描き始めていました。いつか連載できたらアシスタントになってね!と、京本に告げます。

出会うタイミングが違っても、二人とも絵を描く未来は同じだったのです。

 

現実世界への転換

藤野の意識はやがて現実世界へと戻されます。

京本の部屋に入った藤野は、京本が描いたらしき4コマ漫画、机の上に並べられたシャークキックの単行本を見つけます。

単行本は同じ巻数でも数冊並べられており、京本が藤野を応援していたことが見てとれます。

そして振り返ると、かつて自分が京本の服の背にサインペンで書いた"藤野歩"の文字。

京本は初めからずっと、藤野の一番のファンでした。

 

藤野は、漫画を描くのは好きではないと京本に溢したことがあります。

楽しくないし、めんどくさいし、超地味だし・・・読むだけにしといた方がいいよね。

それじゃあなんで藤野ちゃんは描いてるの? そう尋ねられた藤野は、彼女に伝えたことはないのかもしれません。

京本が笑って、楽しそうに自分の作品を読んでくれるから。

それが藤野のモチベーションであり、藤野は京本のために漫画を描いていたのだと、私は思いました。

 

藤野は何かを決意したように、京本の部屋を去ります。

そして自分の作業場に戻り、執筆を開始します。

ここで『ルックバック』の物語は終了です。

 

 

『ルックバック』のタイトルに込められた思い

この漫画を初めて読んだ時は、とても衝撃でした。

漫画を読んで胸打たれるという経験をあまりしたことがなかった私は、作者の藤本タツキ先生がこの作品に込めたメッセージを読み解きたいと、何度も読み返しました。

『ルックバック』という言葉には、回想追憶背中を見る振り返る背景といった意味が込められています。これらは作中に出てくる要素と本当に上手く絡み合っており、藤野と京本が互いの背中を見ながら、互いを高め合っていったストーリーが、まさにタイトル通りです。

この漫画は表紙にもある通り、藤野の背中を描いたコマが多く登場します。机に向かってひたすら絵を描いている藤野の構図はどれも同じですが、季節の変化だったり、描いている場所だったりと周りの変化が見て取れるのが面白いです。

隠された『Don't look back In Anger』の文字

作中、1ページ目の黒板に書かれたDon'tの文字と、ラストページの本に書かれたIn Angerの文字。

間にタイトルを入れて組み合わせると"Don't look back In Anger"という言葉になります。怒りと共に振り返ってはいけない、という訳です。

この言葉は、Oasisというイギリスのロックバンドの、有名な曲のタイトルにもなっています。

この歌は、かつてイギリス・マンチェスターを襲ったテロ事件を憂い、被害者を追悼する集会で人々に歌われ始め、今ではアンセム曲として世界中の人々に広く知られています。

『ルックバック』という作品は、日本の京都アニメーションの事件と類似点が多く、追悼のメッセージも込められていると、言われています。

 

『ルックバック』まとめ

藤野と京本は間違いなく才能ある人間ですが、ただの天才ではなく、二人とも"努力の天才"であったと感じました。

絵に関わらず、ひとつの物事に膨大な時間をかけて真正面から向き合えるというのは、本当に凄いことだと思います。

藤野はラスト、京本の部屋で彼女の自分への思いを汲み取りました。

ここで筆を折っては京本は悲しむ。連載作品を持つ"藤野キョウ"のファンは、全国にも大勢います。

"藤野キョウ"として、藤野は漫画をこれからも描き続ける選択をしました。

 

藤野の決意が読者にも伝わる、悲しくも素晴らしいラストだったと思います。

 

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。 この記事で、興味を持ってくださる方がいらっしゃいましたらとても嬉しいです。

 

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